「自立」とは、自分を含めた外界に対する正しい把握と理解に立ち、自ら考え、判断してやり遂げていく力を培っていくことであり、そのためには達成感や満足感に裏打ちされた自信と自己有用感(肯定感)を育んで行かなければなりません。特に幼児期の「自立」にとっては、まずは生活における自立が大前提になります。“自分のことは自分でする” こと、生活の中で“当たり前のことをする” ことを日常的に積み上げていくことです。

本園の生活の自立の道筋

生活力の集大成、年長組夏の合宿

幼児期の大きな課題として生活の自立が挙げられます。衣食、排泄、自分の身の回りのことを一つ一つ自身の力でやり遂げていく力を着実に積み上げていきます。そして、その集大成として年長組の「夏の合宿」を行います。湯の山温泉の湯の山ロッジに1泊します。その間、布団敷きや布団たたみ、衣服の着脱はもちろんのこと、たたんで整理して片づけるなど到着から就寝、起床、出発まですべて自分の力でやり遂げます。 就寝時の排泄もこの日に初めて大丈夫だったという子も出てきます。仲間と一緒だから「自分もやり遂げよう」という意欲を抱くからこそ達成できるのでしょう。親から離れて仲間と一緒に宿泊するのは、初めてのことであり、合宿を終えると子どもたちは一回り成長します。と同時に、保護者様にとっても大きな体験となり、親子にとっての自立の節目になっています。

一人ひとりが責任を果たしてつくりあげる運動会

本園の運動会は、単に体づくりだけではなく、個々の自立の場として位置付けています。年長児は一人ひとりが運動会を運営していくためのそれぞれの役割を担います。スターター、ゴール係、放送、道具の出し入れ、お土産渡しなどを全員が分担します。運動会の練習では、その役割と動きを身につけていきます。当然のことながら自分の出場競技の合間に担当するので、瞬時に移動したり、対応しなければならないこともあります。また、状況によって変化したり、当日の不測の事態に対応する係の子などは、まさにその場の状況をつかんだ上で自ら判断して動かなければならないことも出て来ます。1,2歳の親子競技のお土産渡しの時に次のようなやりとりがありました。練習の時には後ろで待機している先生からお土産を一つもらってゴールした子に渡していたのですが、当日は思いの外参加者が多かったのです。そこで間に合わないと判断した子が、「先生2つちょうだい」と言って両手にお土産を持って手渡すように変更したのです。決められたことを適切にやり遂げるだけでもたいへんですが、状況の変化に応じて子どもたち自身が判断して対応していくところに本園が目指す「自立」の姿があるのです。自分の役割に責任を持ち、自覚的にやり遂げた子どもたちにとって、この運動会での取り組みが大きな自信と力になっていきます。

そのためには周到な準備が必要です。1学期末からその準備が始まります。子どもたち一人ひとりを把握した上で、その子らしさを生かし伸ばすように、また次のステップに引き上げるよう、総合的な観点から最終的に役割分担を練り上げていきます。 そして、それぞれが自分の役割に対する誇りと自覚が持てるよう、ご家庭の協力も得ながら進めていきます。周到な準備と綿密な計画、細やかな支えによって子どもたちは飛躍するのです。

運動会のテーマと役割分担

「自分らしさ」を発揮し、創造的に仲間とつくりあげるクラス劇

本園は子どもたちの総合力を発揮する場として「劇遊び」を重視しています。年少組から段階的に取り組んでいき、年長児のクラス劇(冬のつどい)がその集大成になります。物語のストーリーをつかみ、頭の中に描き、お話の世界に入っていきます。そして、その役になりきり、自分なりのイメージで動きやしぐさ、表情や台詞の言い回しも作り出していきます。また、仲間と話し合いながら変更や付け加えもしていきます。 練習後の話し合いによって毎回の高め合いにつながっています。もちろん、舞台の衣装や小道具なども子どもたちが手掛けていきます。製作、言葉、動きによる表現、歌やダンスなどこれまで子どもたちが培って来た力をすべて発揮することによって作り上げられていくのです。保育者によって作り上げられた台本に当てはめて子どもたちが言わされる、言いなりに動かされるといった劇ではなく、あくまでも子どもたちが主体的に創造的に劇の世界を楽しむ「劇あそび」を追求しています。

ところで、これも運動会同様、1か月以上の期間をかけて練り上げていきます。やはり周到かつ綿密な準備と取り組みの手順が必要になります。クラスの状況や子どもたちの興味関心を踏まえて題材を決め、子どもたちにふさわしい台本案をつくり上げていきます。本園の劇はすべてオリジナルな台本で行っています。台本案の内容をパネルシアターや絵本を使って伝えることにより子どもたちが自分のものにしていきます。中には子どもたちが台本案にもとづく絵本を作成したクラスもあります。このように配役決めの前にいくつもの段階と時間をかけて子どもたち自身のものにしていくのです。そこに子ども主体の土壌が形成されます。練習が始まると、アドリブも加わり、追加や削除、言葉や言い回しが変更されて台本案が塗り替えられていきます。また、振り付けや踊りも子どもたちが意見を出し合って決めていきます。毎日、振り返りの場を持って確認し合いながら高め合い、日ごとに子どもたちは自分たちの劇の世界を創り、劇の世界に入り込んでいきます。そして、仲間とともに自分らしさを発現していくのです。

子ども主体の劇遊びの流れ