主体的な「遊び」の中にある「学び」の構造

日常生活のあらゆる場面、事象を子どもは遊びに転化していきます。好奇心をくすぐること、おもしろいと感じること、疑問をいだくことなど、ふとしたちょっとした糸口から子どもの遊びは始まります。その中で考え、創造し、発展させていきます。仲間との関わりややりとりをしながら共同することも学び、社会性も培っていきます。一見「遊び」に見えても、決められたことを指示通りにこなすのは遊びではありません。子ども自身が主体的に意欲的にかかわり、創造的に組み替え、作り上げ、発展させていく、楽しくてしかたがないものが「遊び」なのです。

日常生活の中で一人ひとりの子どもの興味関心や思いをとらえ、つぶやきやしぐさにも心を配り、仲間とのつながりをつかみながら子どもたちの「遊び」を引き出していくよう努めています。

後伸びする力 「遊び」の中の見えにくい学力

これまでの小学校以上の学習では、到達目標を定め、知識や技術の修得を重視してきました。ところが、現在は、思考力や応用力を伸ばしていく見えにくい学力に力が注がれており、本園が目指している遊びの中の学力観とつながるものです。幼児教育の中にも小学校以上の学力観が入り込みつつあり、成果や結果を追い求める風潮が強まっています。しかし、本来幼児期は、自然や目の前の具体物や人を通しての直接体験から五感を通して感じ取り、考えたことこそが学びの礎になっていくのです。直接的な遊びを通してさらに思考が深まり、豊かな感性が育まれていくのです。結果よりもむしろその遊びの過程こそが重要なのです。遊びの過程で感じたことや考えたことに周囲の大人や仲間が目を向け、認め、励ますことで子どもは自分の頭や心、体に自信を持ち、意欲を持って次の段階に進んでいきます。もちろん、結果としての到達点を褒めて認め、達成感や自信を持つように取り組みますが、それ以上にその過程での思いや発想、つぶやきや感じたことに目を向け、大切にしていくように努めています。

自然の中で育つ豊かな感性

本園は木造の園舎、木製のアスレチック、緑いっぱいの築山という環境にあり、四季折々の変化を感じ取りながら過ごします。春は草花摘みやだんごむし捕り、夏は蝉捕りや花の色水遊び、秋はとんぼ捕りやどんぐり拾い、冬は落ち葉での焼き芋など自然物での四季の遊びを楽しみます。

園内の田んぼでは、本園ならではの泥んこ遊びを全園児で体験します。また、砂場はもちろんのこと、園庭も掘り返したり、水を流したりとダイナミックな水遊び場に変わります。

小学校の国語の教科書の中に「けやき」(みずかみ かずよ)という詩が掲載されています。

天をゆびさして  ぐんぐん  のびた
大きな    ふんすいだ
陽のにおい  水のにおい
土のにおい  風のにおい
まぶしい   みどりのしぶきだ

このような詩を豊かに味わえるような体験をこの幼児期に十分に重ね、その中で豊かな感性をじっくりと育みたいと考えています。それが小学校以上の学びの深さに影響を与え、後伸びにつながってゆくのです。

栽培から食へ 生きる力を育む

園内の田んぼでは、泥んこ遊びの後、年長児が田植えをします。もみごめから苗ができ、お米になるには長い時間がかかること、草取りをしてお世話をしてあげなければいけないこと、稲が伸びて穂がつき、色づいていくこと、穂の中に米粒が入っていることなど、草取り、稲刈り、稲穂干し、足踏み脱穀機での脱穀体験までの一連の流れの中で感じていきます。そして、全園児でおにぎりを作って味わいます。小学校5年生での稲の学習の原体験になるものと考えています。

それぞれの季節に野菜を栽培して育て、調理もして味わいます。きゅうりやプチトマト、じゃがいもやさつまいも、なすやだいこんなど直接口にしたり、鬼まんじゅうや豚汁を作って味わいます。また、冬には園内の樹木の落ち葉を集めて焼き芋パーティーをします。今では見られなくなった冬の風物詩としての落ち葉焚き。童謡「焚き火」の歌詞にあるような「…たきびだ たきびだ おちばたき あたろうか あたろうよ…」という体験を子どもたちはします。落ち葉の形のままで炭(灰)になる様子、いぶされた匂い、焼ける時の音、風向きによる煙の動き、落ち葉焚きの柔らかい温かさなど五感を通して感じ取ります。さつま芋を洗い、新聞紙でくるみ、ホイールでくるむ手順、風向きや煙の流れを考えて落ち葉を投げ込むこと、すべてが貴重な体験です。もちろん、焼き上がった焼き芋は香りから一味違います。

仲間との遊び 体と心を育て、仲間とつながる

コミュニケーション力を伸ばす

一人遊びをたっぷりとする3歳児のスタートから徐々に仲間を意識し、仲間同士影響を受け合いながら学び合い、成長していきます。そこには必ず遊びが介入しています。遊びを通してつながり合い、言葉ややりとりの仕方、他者とのかかわり方を学んでいきます。「貸して」「入れて」「遊ぼう」「後で」といった言葉によるかかわり方(コミュニケーション力)を身につけていきます。もちろん、自然と身に着くわけではなく、その場面で大人が適切な言葉や関わり方を教え、導く必要があります。発達年齢に応じてそこを丁寧に繰り返し積み上げていくことがとても大切です。3年間の積み上げにより、5歳児になると仲間との衝突や行き違いの場面でも、第3者が介入し、話し合いによって解決していく力を培っていきます。他者との関係性やコミュニケーション力の土台づくりのためにも仲間との遊びは大切です。

年少時から室内では見立て遊びからごっこ遊びへと仲間とのかかわりを意識して高めていきます。クラスの仲間と遊びながら作り上げる劇遊びは、学年を追うごとに高まり、年長時には子どもたちが意見や発想を出し合いながら全員の力を結集して作り上げ、劇の世界に入り込んで楽しむようになります。また、歌やリトミック、楽器遊びからの合奏や合唱を通して仲間を意識して演奏します。

外遊び・土曜外遊びデー

仲間づくりだけでなく、体づくりのためにも戸外での遊びにも力を入れており、土曜日も「土曜外遊びデー」(自由登園)として隔週で午前保育を実施しています。泥遊びや水遊びなど季節にふさわしい遊びも取り入れ、回を重ねるごとに仲間とつながり、仲間との遊びの楽しさを感じていきます。また、平常保育の中でも園庭や築山を駆け回っており、さらに兄弟クラスを中心にして異年齢の子と遊び、つながりを広げていきます。そして年長になると、ねこどんやけいどろなどのルールのある遊びを、工夫しながら楽しむようになります。そして最終的には、自分たちで新たなルールを決めながら自分たちに合った形での遊びを創造し、追求するようになっていきます。

しっかりした心と体を育む

戸外だけではなく、室内でも取り組める運動遊びにも力を注いでいます。体を動かして遊びながら運動能力を高め、心を育てていく安田式体育遊びの理論を実践的に学びながら本園なりの方法で取り組んでいます。園内には、安田式のうんていも年齢に応じて3種類設置しており、他の教具も年次的に組み入れています。