「人間たれ」が制定された経緯

学校法人設立に必須なのは、創立者による財産の寄附行為と建学の精神です。暁学園は女子教育の向上を設立趣意として女子専門学校から始まりましたが、1950年、幼稚園から短大までの総合学園となるに至り、五嶋孝吉初代学園長が学園全体を貫く教育理念を制定するべきと提言しました。これがいわゆる「建学の精神」とされる私学の根幹ですが、本学園では「学園綱領」として検討が重ねられました。同年10月、学園綱領制定委員会での無記名投書から、五嶋学園長が「人間たれ」を学園綱領に選定し、宗村佐信理事長がこれを承認しました。学園綱領「人間たれ」は学園設立の趣意を反映した建学の精神であり、今も幼稚園から大学まで全校園での教育実践の指針となっています。

五嶋先生が「人間たれ」に込めた願い

奈良女子師範学校の教授だった五嶋孝吉先生は、戦後、出征から帰還すると真っ先に宗村佐信社長宅を訪ね、玄関先で私学の女子高等教育学校の設立を懇願したと伝えられています。学園創立後、五嶋先生は幼稚園から短大までの全ての校長を兼務する初代学園長として着任ました。後に奈良女子大学の学長も歴任し、日本の女子教育を牽引した教育者です。 工学博士で、敬虔なクリスチャンでもあった五嶋先生は「人間たれ」の選定にあたり、以下のような言葉を残しています。

「『人間たれ』はいつの時代にあっても人間教育のすべてを言い表したものと私は確信しています。私はこれが『愛は最高なり』ということと相通ずるものであると考えます。極めて優れた才能を持ち、正義感を持った人であっても、愛がなかったら全ては空しいものです。どのように科学が発達し、文化文明が成熟しても、その愛がなかったらそれは空虚で無意味なものでしかありません。人生では、勝者、敗者の違いも生まれますが、たとえ勝者の権力といえども、敗者の愛情には遠く及びません。私たちはこの「人間たれ」を建学の精神として、これを追求する学園生活を送り、心豊かな人間像に一歩でも近づくよう精進したいと思います。」
博愛主義、利他的精神を重んじる五嶋先生の言葉は、人としてどう生きるのか、どうあるべきなのかを問いかける、いつの時代にあっても永遠に色褪せることのないメッセージです。